黒人差別に対するカウンターメッセージをエンタメ映画のフォーマットに込めた作品。映画全体にかなりの情報量のメッセージが散りばめられているが、映画単体で観ても一応それなりに面白い。が、やはり、できれば最低限の知識を頭に入れた上で鑑賞したい。以下が最低限必要な知識…多い…。アメリカの黒人差別の長い歴史(南北戦争頃(1860年代)〜公民権運動(1960年代)〜現在まで)、アメリカ映画史(「國民の創生(1915)」「風と共に去りぬ(1936)」・1970年代に流行した「ブラックスプロイテーション」という映画の一ジャンル)、トランプ大統領やその支持者の立ち位置、現在のBLM運動の盛り上がりとその主要な事件…。これほどの知識を勉強しても、アメリカ人が五感で感じているレベルには遠く及ばないのが悔しいところ。本作品は序盤のアバンタイトルでアメリカ黒人差別の過去を描き、本編は1970年代の"本当にあった話"、本編後は現在のアメリカの映像へとつながる。本編を過去と現在のアメリカの現実で挟むことで、観客が物語の中に完全に没頭する事を許さず、メタ的な視点で五感で感じる事を要求してくる。本編で杜撰な潜入捜査をしているためKKKに何度も怪しまれるが結局最後までごまかし通すのはストーリー的にかなり無理があるが、きっとそれも「これ、ブラックスプロイテーション映画のオマージュだから」という事だろう。本作品を素直に鑑賞すると「黒人差別の根深さについて考えさせられた。白人至上主義の連中は本当に酷い、絶対に許してはいけない」という感想になるだろうが、私はそのように製作者の意図通り(?)に受け取る事が何故か癪に障る。私の心の中のモヤモヤの正体は何か。本作品では本編終了後の"現在のアメリカ"として「バージニア州・シャーロッツビルの衝突(2017) 」の映像が出てくる。白人至上主義のデモと、それに反対する団体のデモの衝突が数日間に渡って続き、ついに暴走した1人の白人至上主義の男が駆る乗用車が反対派の群衆に猛スピードで突っ込み、複数の死傷者が出た事件だ。非常に痛ましい事件だが、本作品の流れでこの事件を見せる事は「反差別デモの群衆に自動車で突っ込んだ男は白人至上主義者だった！」→「白人至上主義は反対派への暴力も厭わない危険思想の持ち主」という拡大解釈・事実誤認を招く。拡大解釈・事実誤認を招くような演出はいかがなものか。冷静に見れば、この暴力行為は白人至上主義者の中のただ1人によるものだ。デモに参加していただけの白人至上主義者は法を犯していない。この事件に関してすべきはこの1人を法に則って裁く事であり、「大義は我々にあり！」と白人至上主義者を1人残らず改心させる事ではない。それは到底不可能な事だし、そもそも本編の中でKKKの事を散々おちょくっていた通り、彼らは頭が悪く収入も低く、しかも現在ではもはやマイノリティ。つまり弱者だ。そんな彼らが憂さ晴らしで愚かな事を喚いているのだ。法に触れていない限りは、大目に見てあげてはどうか。1960年代までのアメリカ南部では、WASP(White Anglo-Saxon Protestant)が社会的に圧倒的な力を持っており、その力を振りかざして有色人種を虐げる人種差別が横行していた。現在のグローバル社会では、知性に優れ学歴を持つものが力を持っており、その力を振りかざして知性に劣る者を虐げる"知性主義"が横行している。このように歴史を振り返ってみると、人間は「正しい事は何か」という論理思考に偏った時に「弱者への思いやり」などの本来持つべき優しさを見失いがちで、そのような時に大きな悲劇が起きる。自らが100%正しい(と思っている)ときも、"敵"への思いやりを持つことが必要だ。以下、次回の鑑賞に備えるメモ。【キャスト・スタッフ】・監督：スパイク・リー・ロン・ストールワース：ジョン・デヴィッド・ワシントン # デンゼル・ワシントンの息子・フィリップ・"フリップ"・ジマーマン刑事： アダム・ドライバー【アバンタイトル】アレック・ボールドウィンが演じるボーリガード博士は架空の人物。アメリカでは、アレック・ボールドウィンはトランプ大統領をコケにするようなモノマネで有名な人物。つまり、アメリカ人が見るとトランプ大統領が時代遅れの人種差別的な思想を語っているように見える。・映画「風と共に去りぬ」(1936)・映画「國民の創生」(1915)・ブラウン判決 (1954)・リトル・ロック（アーカンソー州）セントラル高校の人種統合 (1957)【本編】・ブラックスプロイテーション(Black + exploitaion = Blaxploitation)映画 # マヌケな白人をカッコいい黒人がやっつける安直な図式の映画。1970年代に流行った。・警察署の面接で所長の横にいる黒人は誰？なぜ黒人なのにロンに対して敵対的な態度？・警察署の面接でロンは「お前はジャッキー・ロビンソンになる必要がある」と言われる。ジャッキー・ロビンソンは近代メジャーリーグ初の黒人選手で、人種差別に耐えながら優秀な選手として活躍し、黒人差別解消に大きな影響を及ぼした。・ストークリー・カーマイケル（クワメ・トゥレに改名）# 元ブラックパンサー党幹部・1970年代のコロラド州、黒人差別はまだまだ残るものの、音楽やプロスポーツなどの分野で黒人のサブカルチャーは全米を席巻している様子。KKKのメンバーが(被害妄想を多分に含むだろうが)「俺たち白人は逆差別されている」と言うほどに。警察署員の多くもロンに対して好意的に見える。・KKK幹部のデュークが風と共に去りぬの黒人メイド・"マミー"について語る場面がある。"マミー"のような白人に忠実に使える黒人に対しては好意を持っている。・KKKの集会の裏でクロスカッティングで描かれるブラックパンサー党の集会で、ハリー・ヴェラフォンテ演じる黒人の老人がジェシー・ワシントンリンチ事件(1916)を語る # 17歳の黒人少年ジェシー・ワシントンに殺人の容疑が掛けられ、たった4分の審理で死刑宣告となった。直後、ジェシーは裁判所から群衆により連れ去られ、1万人の衆人環視のもと、指、つま先、性器が切断され、油を掛けて鎖によって焚き火の上に吊るされ焼き殺された事件【本編後の映像】・バージニア州・シャーロッツビルの衝突(2017) # 白人至上主義へのカウンターデモに車で突入し多数の死傷者が出た事件。トランプ大統領が「双方に非がある」と発言したのが問題になった。映像の中に、元・KKK理事として実際のデビッド・デュークが登場しトランプ大統領支持を表明する。

2023/05/31

不思議な魔法を使うナニーマクフィー。子供のしつけがよくわからないおとうさん、おかあさんはもとより、子供にも見せたい佳作です。最近のハデハデCGだけで中身のない作品とは違い、期待以上の内容でした。（価格も安かったし）もしかしたら、こういう作品がもっと埋もれているんでは、と、最新作ばかり購入していた自分を反省。

2023/05/27

冒頭ですでに❔でした。ボカシ大きすぎて画面壊れたかと思ったw映像を期待して見ない方がいいですよー。

2023/05/27

フェイ・ダナウェイ出演と知り視聴。ホラーに何を求めるか、何をホラーと感じるかは人によって異なる。理解可能な話であれば謎は残らず面白さを欠くが、理解不能であればいいというものでもない。早々に出て繰り返される列車４２４１、古いコインは一体何だったのか、回収されずに終え、要らなかったんじゃないのと思わせてしまう。原因不明の銃乱射事件や殺人がなぜ起きたのか、なぜ起きるのか。集団催眠か、あるいは精神を病んでいたのか、信じるか信じないかはあなた次第。

2023/05/26

汚染された大気。シェルターで過ごす人々。食糧の支給その不足に不満を持ち暴動。アンドロイドを製造する博士。アンドロイドが汚染された大気に飛出し……、人類は人殺しと破壊ばかり、助ける必要があるのか……、とアンドロイド。シェルター内にも汚染が進行し、人類滅亡の危機……、人類に不満のアンドロイド、人類と対決だー!!なにがなんやら？、なにがいいたいのか？、意味不明のまま、終わり……アンドロイドも、人殺しと破壊って……

2023/05/24

家族の絆！平和ボケを治す一本に！

2023/05/21

出木杉くん。でも、素敵な映画。〇

2023/05/17

何故かこの人がいると晴になる晴女・晴男，雨になる雨女・雨男などの俗説はあります。その俗説の1つ「晴女」をモチーフとした，銃刀法違反に手を染めてしまう家出少年と，少し不思議な力を持った親亡き少女のお話です。舞台は雨が何故か続いている年の東京。結論では，この家出少年は銃刀法違反の現行犯その他諸々で元の地区に戻され保護観察処分となります。少年が家出してからこの保護観察処分になるまでの「夢のような人生の一部を潰してしまう」お話です。結論だけ欲しい（映画を見る予定の無い）人からすればこれで十分かと思います。しかし，この作品には「それだけでは語り尽くせない」本編があります。この作品が出てきた2019(令和元)年は，世界が変わるとしたらがまだ色々話せた時代です。SNSの注目のされ方なども(TikTok重視ではなく)まだtwitterがましに機能していた時代です。そんな時代に，7月まで続いている梅雨が「仮に更に続いたとしたら」こんな感じになるのでしょう。流石に「8月に雪」は降らないでしょうが。この作品では様々なものをある意味風刺している側面があります。現在の東京は徳川家康が来るまでは確かにある意味「海の入り口」のような場所でした。現在東京として使われている地区にも江戸時代などに埋め立てた場所があります。3年ほど雨が降り止まずに続けば確かに埋め立てた地区は全て海の底に沈むのでしょう。一方で現代の東京・新宿は「考えなしに高校生が家出して出てきても」確かに居場所はありません。他方で，年齢チェックなどが緩い部分はあり，居場所が見つかるといられてしまいます。そして，何故か一般には無い筈の拳銃が「手に入る」可能性が考えられそうな描写をしています。何故か出てくる「銃を取り出す前の」写真などはSNSに防犯カメラ等を駆使すれば有り得ます。SNSで銃声が話題にならないのは不思議ですが。新宿・代々木では珍しくないのでしょうか。しかし警察が追いかけていることを思うと，珍しくないことは流石に無い筈です。1泊28,000円のホテルで夢のような一夜の後，翌朝警察に見つかるシーンが一瞬最後かと思えます。そこで止めても映画としては一応成立します。30分位短くなり，映画の持つメッセージは変わりますが。代々木の廃ビルで2人して倒れているシーンで終わりにしても映画としては成立します。10分ほど短くなりますし，映画のメッセージとしては心中して終わるかのように変わりますが。弥生・古墳時代の日本などでは「人柱を立てる事で」雨ごいをするの願いを立てる事がありました。この映画のキーワードの1つに「人柱」が有りますが，そんな様子さえも風刺しているようです。現代だと「人柱」ってこうやって行われていくんだろうな...そんな部分があります。都市伝説的な話を聞いて，そして思い込んで...地球温暖化等についても科学的根拠を理解せずであればこうやって対処しだす例もあるかもしれません。平泉さん演じる刑事が言います：「何故そこまでして...」この段階で主人公は捜索願の出ている家出少年として警察に確保されますが，銃刀法違反も残ります。その状況で「警察を振り切って」逃げていて，自転車盗難未遂，ノーヘルバイク同乗も起こしています。その理由程非科学的なものは無いのですが，確かにそれだけのものをかける価値が主人公は感じます。ただ最後のまとめ方から察するに，肝心な部分は「思い込み」として理解されず，単に「好きになった少女を探して」これだけのことに及んだ，という形で保護観察処分とした，となったのでしょう。少し上の世代だったら恐らくこの言葉を2人にはかけることでしょう：「あなた1人で背負える程東京の天気は軽くない」と。ただ，2人にとっては自分達の選択が実際に世界を変え得ると判断しています。最終的にはその結果，止むことの無い雨で低敷地の多くが水没する訳ですが。生きて欲しいと願った結果は本当に止むことの無い雨だけだったのでしょうか。2人の会いたいという思い，そして消えることの無い「保護観察処分」という公的記録です。「まだ東京の警察に追われているって本当ですか?」保護観察処分なのでなまじかし嘘でもありません。しかも事件をエスカレートさせたきっかけの相手に卒業後すぐに会いに行っているので危険度大です。よく「保護観察処分」だけで済んだな，と思います。学校の退学だって有り得た話です。だって警察を飛び出し(公務執行妨害は成立します)，違法銃を手に追い詰められている訳ですから。周囲にも公務執行妨害・犯人隠避などで捕まりそうな方もいました。ヒロインとその弟が無事ということも望み薄なはずで，本当に1番いいシナリオだったらという未来です。雨が降り続くことを除けば，ですが。最後に。ずっと雨が止まずに3年が過ぎる場合，もっと東京は混とんとしているはずです。平成米騒動を引き起こした冷夏の1993(平成5)年を思い起こしても，ここまで無事では無いでしょう。各地が豪雨で水没した2000(平成12)年を思い起こしても，ここまで無事では無いでしょう。水没地域から老人が1人で東京内でマンションの高層階に引っ越すという事も難しいように思います。

2023/05/17